【哲学】Q〜わたしの思考探究〜第3回「言葉とは何か」(2011年2月12日放送)

Q〜わたしの思考探究〜第3回「言葉とは何か」
教育テレビ 2011年2月12日(土) 午後11:45〜午前0:15

Q〜わたしの思考探究〜セレクション「言葉とは何か」(再放送)
教育テレビ 2011年2月12日(土) 午後4:00〜4:30

テレビ番組の感想です。

【対談者】 又吉直樹×町田健 (謎かけ人×知識人)
【司会】 上田紀行小池栄子

大学の講義を聴いてるような雰囲気で楽しかったです。

--- 人物紹介

又吉直樹(30)(お笑いタレント)(ピース/綾部裕二)
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町田健(言語学者)(名古屋大学教授)

言葉のチョイスはピースにとってまさに生命線。 そんな又吉の抱える悩みとは?  「もっとですね 思っていることを 言葉で伝えられないかなと もどかしく感じることがありますよね」 夢に活字が出てくるほどの読書家。 敬愛する太宰治松尾芭蕉にちなんだトークイベントを主催するほど。 最近では自由律俳句(音数にとらわれない)にも挑戦し、 念願の本を出版した。多彩な活躍を見せる又吉は、生涯、言葉とともに生きていきたいと語る。

まさかジープで来るとは [幻冬舎] せきしろ×又吉直樹 (単行本 - 2010/12/16) 1,470円
カキフライが無いなら来なかった [幻冬舎] せきしろ×又吉直樹(単行本 - 2009/6/25) 1,365円

 渋滞中の国道で夢を語られている
 沈黙が一番喧しい ←
 目配せの意図は解らないが頷く
 大盛りという嫌がらせもある
 先代から知ってそうな客に負い目を感じる
 号外は貰えなかった

「突き詰めたら 言葉とは何なのかってことを 知りたいですね」(又吉) 「言葉というのはですね 人間が思考をするための手段ですので 言葉を分析することで 人間の思考の本質といいますかね モノの考え方というのがわかります」(町田)

よろしくおねがいします。

--- 言葉と表現

「ボク 普段から もっと頭で考えてることを うまく言葉で表現できたらなということが多々あるんです。 自分が面白いなと思ったことを こう 相手に伝えたいなと 思うんですけど あの それがどうもね 伝わらないだろうな と解るときもあるんですよ たとえばですね…」

 壊されて使えなくなった便器
 それを労わるように掛けられたジャケット

絶対に伝わらないだろうなって思うんですよ まず 意味がわからないでしょうし そういうときに  どうやったら ボクが思ってる この頭で思ってることを そのまま相手に伝えれんのやろとか そういう風に 思うことが多々あるんですよ」

「それはもう当たり前のことですね え これはね 言葉というのはどうやったって正確には伝わらないんですよ 人間はね あなたの感じた あるいは経験したのと まったく同じように 相手が理解してくれるように 表現するというのは 言葉では絶対に無理です 絶対無理になっているんです だからこそ 人間はですね 努力をし続けているわけなんですね 昔から」 「なるほど」(元気ないなw)

「その理由は何かというとですね たとえば… 便器だけを指し示す言葉 単語というのは ありえないわけなんですね  だって他にもいろいろ便器があるし そういうのを正確に表そうとすれば その便器のためだけの単語を作らなければならない べゃきとか これを見たとき俺<べゃき>と言いたい」 「なるほど」(相変わらず元気ないなw)

「だけど<べゃき>と言っても 相手にはわからないわけですよ」「伝わらないですね」「たからこそ 言葉というのはですね ある程度のモノのまとまりをつけてそれに対して名前を与える それをみんなが共通に あっこんなもんだなあと いう風に思おうと いうしかないんです だから 絶対に言葉というのは 曖昧じゃなきゃいけないんです」「曖昧じゃないとダメなんですね」「そうなんです」「言葉は曖昧だからこそ 私たちが自由に使えるわけなんですね」

曖昧やから不便やと思っていたんですけれど そうじゃなくて 曖昧やからみんなで共通で持てると」「そうなんです」「たとえば180cmの人…(長身とはどこまでか)…わからないんです どこが境なのか だからですね どうしても言葉を使う以上は (言葉の)曖昧性というのを 我々は逃れることができないんですね そういうのが言葉の制約なんです」

 「言葉は曖昧だからこそ 自由に使える」(町田健)

--- 雨と日本人

「ボクとかは できるだけ 的確というか 何か近い言葉がないかなと思って 類語辞典(シソーラス)とかを結構持ち歩いて 仕事のときに あの見て 使ったりもするんですよ」「それは非常に良い心がけですね たまたまここに類語辞典があるんですよ」「ははは」

「いろいろあるんですよ たとえばここに雨… 小雨 小振り 霧雨 糠雨 本降り 長雨 霖雨 梅雨 五月雨 春雨 秋雨 霙 氷雨 雪混じり 俄か雨 通り雨 夕立 村雨 時雨 村時雨 驟雨 大雨 大降り 豪雨 強雨 猛雨 集中豪雨 雷雨 暴風雨 甘雨 好雨 慈雨 雨水 天水 涙雨… というように 日本人がだいぶ雨に関心があるんだなということは良くわかるんですけども これ意味の違いというのは わかりますか?」「霧雨だと…気持ち良い…風吹いてない状態ですかね イメージだと ボクの すごい難しいというか細かい」

「水滴が降ってきてるような現象を 雨と呼んでるわけですけども その現象の中に最初から 神様がですね これは〜と決めてあるわけじゃないですよね」 「自分たちの都合 考え方だけで まあこの辺までは小雨にしようとか この辺ぐらいの水滴が降ってきたら 霧雨にしようね とか いう風に 勝手に区別をつけてるわけですよ」「最初からあったわけではなくて 勝手に(名前を)つけたんですね」「だから 連続した現象やモノの中に区別を設けると その作用をですね 分節化 という風に言うんです これが単語を作る いろんな単語ができあがっている 基になっている 言葉の最も重要な性質であるわけなんですね」

 【分節化】 連続した事象に切れ目を入れて ある概念を作り出すこと

一口に雨と言っても、雨の強さによって「大雨・小雨・霧雨」と呼び分けている。 また季節によっても「春雨・梅雨・秋雨・時雨」などと区別している。 さらに「糠雨・驟雨…」日本語のように雨に関して語彙が豊かな言語は珍しい。 日本では雨が多いため、分節化が細かくされてきた表れと、町田さんは指摘する。

--- 言葉と分節化

「言葉というものはですね 人間がいろんな事物の中に 恣意的に 勝手に区別を設けて で それぞれに名前をつけて 互いに区別しようと… その区別の中から意味が生まれてくるんだという…」「区別することによって意味が生まれると?」「そうです」「そうして たとえばこれは…違うんだよと その降り方によって区別が出てくるんだよと そういう区別を設けて 関係によって意味を設定するんだと」「最初からあったものに名前をつけるんじゃなくて 名前をつけるから そういう風に共通認識として…なるということですね」「そういうことですね」「…に名前をつけることによって はじめて 人間はモノの正体がわかると」「そういう いろんなモノの分節化されたモノに名前をつけたもの これが言葉だと いう風に考えればよろしいですね」

 「名前をつけることによって 物の正体がわかる」(町田健)

自分が興味のあるものに大して、名前をつけて区別する
名前をつけることで、はじめてモノの正体が認識できるようになる

まあ、ここまではわかります。

名前をつけることで正体が認識できたと「わかった気になってるだけ?」
名前をつけることで「思考停止状態になっていはいないか?」
「それ以上深く考えなくなる」そんな危険性はないのでしょうか?

--- 言葉をつくる

「ネタとか書いてて すごい昔思ったんですけど 妖怪のね ネタを考えていたことがあるんですよ かまいたちって妖怪がおるじゃないですか… そう考えると 家におるときとかに 爪切りがなんか 突然なくなるときとかありますよね 絶対ここ置いてたハズだけどないと どうしてもボクの中で納得できないときがあって ほんならこれは つめ切りを隠す妖怪…つめ切りかくし…というものが居て そいつの仕業だと把握するんですよ つめ切りかくしというのがボクが言うことによって 世界的に広まったら 言葉として成立するんかなと思ったり」「はい それは成立… もしあなたがものすごい大権力を持っていて 俺の言う言葉を使えと みんな つめ切りかくしという妖怪が存在するんだと 存在するんだと思え はいとみんなが承知してくれたなら あの 広がるでしょうね なかなか難しいと思いますけど」ヾ(- -;)マテ

「それが広まって 一般に受け入れられたら なかった事柄が生まれ出るわけです 言葉を作ることによって それは名前をつけて言葉になるみたいなことなんですね」「言葉が現状や事実を作り出すという そういう…つめ切りかくしは良いですよ!」「先生 なんとかつめ切りかくしを世界的に有名にしてください!(お願いしますっ!!)」「ハハハハ 頑張りま…」

--- 街頭インタビュー

「言葉はツール 全部ではない 表情とか コミュニケーションの中の一つの部分であるとは思う」 んだね

「相手のね 感受性のね 強いときは それなりに言葉を濁して 傷つけないよーに …相手に伝える」 女性が考えそうなことかな 何言ってるかわかんなくて逆にイライラしてくるw 言葉(だけ)で傷つくってのが理解できません

「音楽が好きでライヴに行くんですけど テンション上がってる時に なんて言ったらいいか分からない ストレートな言葉しかないんで 複雑な感情とかが ぜんぜん伝わらない」 うんうん!そんときって大抵複雑な感情はなくなって、よりシンプルになっちゃうんですよね。 言葉が安っぽくなるといいますか。

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「私には子どもが3人いるんですけども やはり 子どもがどういう風に言葉を覚えていくんだろなというのはですね 随分気になっていて 最初からこの単語の意味が 頭の中に入ってるようなことは決してないわけですよね」「どうやって覚えてんねやろって 言われてみたら思いますね」

--- 思考の糧 (Food for Thought)

〜町田さんの問いかけ〜

まだ言葉を知らない子どもにイスという言葉を教えたい。
どうやって伝えたら良いだろうか?

 1.指さす
 2.イスに座る
 3.さまざまなイスを用意する

どの選択肢が子どもに一番伝えやすいだろうか?
(3に近いかな。イスと似たようなものも他に混ぜとく)

又吉さんの選択は「2」、実際にイスに座りながら行動を見せてイスというのが一番伝わりやすいかなって気がしますけど。(確かに一番伝えやすそう、伝える側が楽そうだけれど…相手に伝わるかな?)

「あなたが座っているところをイスと言います?」「あっ、座る行動のことをイスと思っちゃう可能性があるっていう あ〜 なるほど… じゃ 指さして イス」(とってつけたような解答だな)

「一番普通の人がそういう風にやることが多いと思いますね それだ段々覚えていくことは覚えていくんですが 一番大きな問題は (違う形の)これもイスだと いうことが わからない可能性がありますよね こういう色でこういう形をしている物だけがイスであって 他のものはイスではないんだと」「なるほど」「っていうようなね 可能性も出てきますよね」

「というわけで 正解なんてのは 実はないんですよね」 ヾ(- -;)ナインデスカ

「え?ないんですか?」「申し訳ありません」「緊張しながら答えたんですけど」「アハハハ すみませんね」

--- 子供の言語習得

「ま 実際ところ 子どもというのは 1個のイスだけをさし示してイスというだけではわからないんですけども 何回か見ているうちに 私たちがイスだと思っている物の集合体にイスという名前がついているんだと そういう集合を作る能力というのを 専門的に言うと 範疇化(はんちゅうか)の能力と言うんです 難しいんですけどね」「範疇化ってのは何なんですか?」「グループ分けの能力です」

 【範疇化】 同じ種類のものをまとめること、グループ分け、カテゴライズ

町田さんは人にはカテゴリを作る潜在的な能力があるという。 範疇化とは、このカテゴリ化のことを指す。 たとえばイスの場合、子供は机やテーブルなどと区別して(机とテーブルの違いって何?w) イスという概念を把握すると、町田さんは言う。

「イスと覚えたら イスらしきものが見えたらイスとわかってしまうとことですよね」「そうですね こういうものはイスの仲間には入らないんだとか 段々と正確に分かって行って、最終的に子供は正しい言葉を覚えるという」「なるほど」「だから 人間がモノを集合化する能力、あるいは認識する能力というのが最初から人間に備わっているから、言葉というものの習得がですね 割と早くできるんだと説明ができるんじゃないかと思います」

 「人間が言語を習得できるのは 範疇化の力による」(町田健)

「範疇化をする能力が人間にあるからこそ 分節ってのが出てくるんですね 要するに範疇化の能力を基として 事象 いろんな事物を分節して 単語を作るということです その仕組みが言葉の重要な仕組みで 人間は生まれつき その範疇化の能力を持っていて 範疇化の能力によって言葉が生み出されて 私たちは言葉を使って 物事を認識し 表現するわけですので」

 範疇化 → 分節化 → 単語

「じゃ その 範疇化によって設定された集合の関係 つまり まあ もっと分かりやすく言うと 言葉の網の目を通してですね 世界を見ていると そう考えることができるのではないかと思います」

 【言葉の網の目】 範疇化の作用によって生まれる

言葉の網の目は、範疇化の作用によって生まれている。 人は現実や物事をこの言葉の網の目を通して認識していると、町田さんは指摘する。 この網の目が粗いと、語彙は限られ、物事を認識する幅が狭くなる。 一方、網の目が細かくなると、表現が豊かになる可能性が生まれると言うのだ。 (頭の良さ=単語の多さ?w)

--- 言葉と表現

「最初の質問に戻りますけど こうピッタリ自分の頭の中にある想いとかを表現、上手くいく言葉で表現するためには どういうことをしてけば良いんでしょうか?」「ええ 明暗というか すぐにできることがなくて残念なんですけども 語彙を増やすというのが一番 単語の力を増やすということですね 又吉さんは その類語辞典を持ち歩いて いろんな表現を頭の中に入れているし 三島由紀夫は大作家だと思いますけども やはり一生懸命に辞典を毎日毎日読んで語彙を増やしていたということらしいので ま やはり 大雑把な網の目だと 抜け出てしまうものが多いので ま できればちょっと網の目が狭くした方が良いというのは確かです」「なるほど」

「ただ それだけでは 相手がね 自分がいくら難しい単語を覚えても 相手に理解してもらえないとことだってあるわけですので ええ 別の方法もあって それは まあ比喩ですね」「比喩?」「(なになに)のような(なになに)と言うように 具体的なイメージを与える単語を使って それに似た特徴を持つことを言うようにすると 相手がより具体的にわかってくるわけです」「なるほど とにかく単語を増やして 喩えを上手くなるように努力すると」「はい」「わかりました」「是非 頑張ってください」

 「語彙(ごい)を増やす 比喩(ひゆ)を使う」(町田健)

--- 司会者たちのコメント

「面白いですね〜 もっと細かく表現したいですけど 私言葉を知らないので 見つかりません」「同じことを感じました 僕はやたらスゴイスゴイと言っちゃうんですよ 」「私も言います」(笑) 「僕のスゴイと小池さんの凄いは切り分けが違うんですよね」「そうなんですよね」「で なんとなく スゴイね凄いねと言って分かり合ってるんだけれど わかりあっているのだろうかと」(どちらでもいいんじゃなイカ?)「そこであなたの凄いと僕のスゴイはどう違うんですか?と聞くわけにもいかない だから語彙を増やさなくちゃいけない」「言葉勉強しないとなあ」

「肩の荷」をおろして生きる [PHP研究所] 上田紀行 (新書 - 2010/7/16) 798円
生きる意味 [岩波書店] 上田紀行 (新書 - 2005/1/20) 777円

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20世紀初頭、ある天文学者がこう語った「思想は、それだけ取ってみると、 / 星雲のようなものであって、 / そのなかでは必然的に / 区切られているものは一つもない。 / 予定観念などというものはなく、 / 言語が現れないうちは、なに一つ分明なものはない。」 (文明じゃなくて分明なんですね)

フェルディナン・ド・ソシュール(スイスの言語学者)
(Ferdinand de Saussure, 1857年11月26日 - 1913年2月22日)

人間が空に輝く無数の星に関係を見出し、星座を作り出した。 この星座に当たるのが概念であり、それが言葉であると考えた。 また言語が異なれば、言葉の網の目もそれぞれ違うのが当然だと指摘した。 その原因は社会や文化にあり、言葉を考えることによって社会の在り方が明らかになると考えたのだ。

ソシュールは、言語学の地平を大きく切り開いた。現代思想の源流の一つ、構造主義の礎を築いたと言われ、レヴィ=ストロースフーコー文化人類学や哲学など多岐にわたる分野に影響を及ぼした。

クロード・レヴィ=ストロース(フランスの社会人類学者、思想家)
(Claude Lévi-Strauss, 1908年11月28日 - 2009年10月30日)

ミシェル・フーコー(フランスの哲学者)
Michel Foucault 発音例、1926年10月15日 - 1984年6月25日)

ソシュールと言語学 [講談社] 町田健 (新書 - 2004/12/18) 756円
日本誤百科 [中日新聞社] 町田健 (単行本 - 2010/12/14) 1,500 円