第143回芥川賞・直木賞の作品一覧(2010年07月15日発表)

昨日、芥川賞直木賞が発表されました。

メモ書き。

次回。第144回。平成22年度(2010年度)下半期。
今回。第143回。平成22年度(2010年度)上半期。←
前回。第142回。平成21年度(2009年度)下半期。
芥川賞直木賞昭和10年(1935年)に制定。

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左(←)「赤染晶子」(35)、右(→)「中島京子」(46)

(芥川賞) 赤染晶子乙女の密告』(新潮6月号)
赤染晶子さんは初のノミネートで受賞。
小川洋子氏曰く「アンネ・フランクを密告したのは誰か、という歴史上の大きな問題を小説に取り込み、個人のアイデンティティーや『忘れる』とはどういうことかを描き切った」
「日本でのアンネのロマンチックなイメージを、ユーモアを使うことで疑問視できれば…」
京都外国語大学卒業ののち、
北海道大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻修士課程を修了。
2004年『初子さん』で第99回文學界新人賞を受賞し作家に。

芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品。
芥川賞の両作品の書籍はこれから発売予定。

(直木賞) 中島京子 『小さいおうち』(文藝春秋
中島京子さんは初のノミネートで受賞。
林真理子氏曰く「戦前の中産階級の家庭を生き生きと描き出している。登場人物のリアルさ、史料の読み込み方が素晴らしい」
「一つハードルを越えたところで自由に書けるようになるなら、うれしいです」
東京女子大学卒業。
日本語学校や出版社に勤めたのち、フリーライターを経験。
2003年に『FUTON』で小説家デビュー。

直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短編および長編の大衆文芸作品。

(芥川賞) 乙女の密告 赤染 晶子 (ハードカバー - 2010/7/26) 1,260円
(直木賞) 小さいおうち 中島 京子 (ハードカバー - 2010/5/27) 1,660円

赤染晶子Amazon作品一覧
中島京子Amazon作品一覧

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第143回芥川賞は赤染晶子氏『乙女の密告』、直木賞は中島京子氏『小さいおうち』が受賞 オリコンランキング(毎日新聞デジタル) 2010年07月15日 19時40分

日本文学振興会は15日、第143回芥川賞直木賞(平成22年度上半期)を発表した。芥川賞赤染晶子氏『乙女の密告』、直木賞中島京子氏『小さいおうち』が選ばれた。
赤染晶子氏の『乙女の密告』は、1回目の投票から票の過半数を獲得。投票は3回続いたが評価は変わらず受賞に至った。芥川賞選考委員の小川洋子氏は「最終的には鹿島田真希さんと赤染さんが残り、2作受賞になるかどうかという点でもっとも長い時間をかけた」と選考の過程を語り、最終的に「“アンネ・フランクを密告したのは誰か”という歴史的・社会的なものを題材にもってきつつ、“自分は誰か?”という文学的なテーマに落とし込んでいる」(小川氏)という赤染氏の作品のみが3回の投票すべてで過半数の票を集めていたことを理由に、1作品のみの受賞となった。
一方の直木賞は、道尾秀介氏と中島氏の2作が残り長い協議が繰り返されたが、最終的に中島氏が受賞となった。直木賞選考委員の林真理子氏は「戦前の中産階級の家庭をいきいきと描いている。また、中島さんは膨大な資料を読んでおり、読み込み方のなめらかさも素晴らしいという意見があった」と中島氏の作品が選ばれた理由を語った。
赤染晶子氏は1974年生まれの35歳。京都外国語大学卒業ののち、北海道大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻修士課程を修了。『初子さん』で第99回文學界新人賞を受賞し、その後『まっ茶小路旅行店』、『花嫁おこし』、『うつつ・うつら』などを発表。
中島京子氏は1964年生まれ、東京女子大学卒業。日本語学校や出版社に勤めたのち、フリーライターを経験。2003年に『FUTON』で小説家デビュー。これまで『イトウの恋』(講談社刊)、『ツアー1989』(集英社刊)、『桐畑家の縁談』(マガジンハウス刊)、『冠・婚・葬・祭』(筑摩書房刊)、『女中譚』(朝日新聞出版刊)などを発表している。
昭和10年に制定された芥川賞直木賞は、新聞・雑誌に発表された作品のなかから(直木賞は単行本も含む)、芥川賞は純文学短編作品、直木賞は短編・長編の大衆文芸作品の中から優秀作を選定する。1月14日に発表された前回(平成21年度下半期)は、芥川賞が1999年上半期以来の"該当作なし"、直木賞佐々木譲氏『廃墟に乞う』と白石一文氏『ほかならぬ人へ』が受賞した。
今回ノミネートされた作品は以下のとおり。
●第143回芥川賞 候補作品
赤染晶子乙女の密告』(新潮6月号)
鹿島田真希『その暁のぬるさ』(すばる4月号)
柴崎友香ハルツームにわたしはいない』(新潮6月号)
シリン・ネザマフィ『拍動』(文學界6月号)
広小路尚祈『うちに帰ろう』(文學界4月号)
穂田川洋山『自由高さH』(文學界6月号)
●第143回直木賞 候補作品
乾 ルカ『あの日にかえりたい』(実業之日本社
冲方 丁『天地明察』(角川書店
中島京子『小さいおうち』(文藝春秋
姫野カオルコ『リアル・シンデレラ』(光文社)
万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(筑摩書房
道尾秀介『光媒の花』(集英社
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100715-00000022-oric-ent
芥川・直木賞芥川賞赤染晶子さん 直木賞中島京子さん
第143回芥川・直木賞日本文学振興会主催)の選考委員会が15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は赤染(あかぞめ)晶子さん(35)の「乙女の密告」(新潮6月号)、直木賞中島京子さん(46)の「小さいおうち」(文芸春秋)に決まった。ともに初ノミネートだった。(4面に赤染さんの「ひと」)
芥川賞で2度目の候補に挙がったイラン人のシリン・ネザマフィさん(30)は受賞に至らなかった。
赤染さんは京都府生まれで、宇治市在住。京都外国語大と北海道大大学院でドイツ語とドイツ文学を専攻。04年に「初子さん」で文学界新人賞を受賞し、作家デビューした。
乙女の密告」では、京都の外国語大の「乙女」と自称する女子学生たちが「アンネの日記」のドイツ語訳の暗唱に取り組む姿を描いた。小説的なたくらみとユーモアに満ち、アイデンティティーとは何かを考えさせる。
赤染さんは会見で「すごく驚いています。日本でのアンネのロマンチックなイメージを、ユーモアを使うことで疑問視できれば、と思いました」とほおを紅潮させて語った。
中島さんは東京都生まれで、文京区在住。東京女子大文理学部史学科卒業後、日本語学校勤務、雑誌編集者などを経て96〜97年、インターンシップで米国に滞在。帰国後に小説を書き始め、03年に「FUTON」で作家デビューした。
「小さいおうち」は戦前、戦中という時代相の中で、東京のある中流家庭の日常を描いた長編小説。お手伝いの女性が戦後60年以上たってから「美しい奥様」と過ごした日々を追想する。巧みな構成と柔らかな筆致でつづられた作品だ。
中島さんは会見で「知人から『これで自由に書けるようになりますね』というメールをもらいました。一つハードルを越えたところで自由に書けるようになるなら、うれしいです」と話した。
贈呈式は8月20日午後6時から東京・丸の内の東京会館で行われ、正賞の時計と副賞100万円が受賞者に贈られる。
◇歴史的問題を表現−−赤染作品
芥川賞選考委員の小川洋子さんは「アンネ・フランクを密告したのは誰か、という歴史上の大きな問題を小説にしっかり取り込み、個人のアイデンティティーや『忘れる』とはどういうことかを描き切った」と述べた。
◇生き生きと描いた−−中島作品
直木賞選考委員の林真理子さんは「戦前の中産階級の家庭を生き生きと描き出している。中島さんは今まで賞に恵まれなかったが非常に力量のある方。登場人物のリアルさ、史料の読み込み方が素晴らしい」と評した。

第143回芥川賞・直木賞 歴史見つめ新たな光 asahi.com 2010年7月17日

第143回芥川賞直木賞日本文学振興会主催)は、芥川賞赤染晶子(あかぞめ・あきこ)さんの「乙女の密告」(新潮6月号)、直木賞中島京子(なかじま・きょうこ)さん(46)の『小さいおうち』(文芸春秋)に決まった。それぞれの方法で歴史を見つめ、新たな光を当てている。
芥川賞乙女の密告」 巧みさ評価、圧倒的支持
芥川賞に決まった赤染さんは、アンネ・フランクが昨年生誕80年を迎えたことをきっかけに『アンネの日記』を再び手に取った。受賞作は、その『日記』の本質を、外国語大学の女学生である「乙女」が理解していく物語。「日本人の女の子たちの世界を乙女という作り物にして描くことで、アンネの日記の世界のリアリティーを強調したかった」
自らの問題意識のもとで歴史をユーモラスに再検証する作風について選考委員の小川洋子さんは「ある区切られた空間の中にある人数の人が集まると、理不尽なことが起きる。大学の教室の中で乙女と呼ばれる生徒たちが二つの派閥に分かれて争い、密告が起こるというのは、アンネ・フランクの身に起きたことに重なる。二つの世界が結びつく巧みな小説」と評価した。
小川さんによれば、赤染作品は最初の投票から過半数の支持を集め続けたという。同時受賞の可能性があったのは、鹿島田真希さんの「その暁のぬるさ」(すばる4月号)だった。「平安朝の女房文学風の技巧的な、色気のある文章で、この世界を作ったことを評価する人もいたが、その語りの波に乗れないという人もおり賛否が分かれた」という。
また、注目されたシリン・ネザマフィさんの「拍動」(文学界6月号)については「全候補作の中で最も人間の本質的な部分にふれる題材を扱っていると評価する人もいたが、主人公の通訳の女性があわてふためいているのにつられて、書き手もあわててしまったようで、一場面一場面を客観的に描けていなかった」と話した。
直木賞「小さいおうち」 「印象小粒」奮起を促す
直木賞受賞作『小さいおうち』は、戦前から戦争下へと向かう時代の中産家庭の暮らしぶりを、戦後の視点から「暗くて悲惨」に描くのではなく、その時代に生きた人間の感覚で「軽やかでリアルに」描いたことが高く評価された。その背景には、膨大な資料の読み込みと咀嚼(そしゃく)があり、直木賞の選考経過を発表した林真理子さんは「なめらかに表現されている」と評価した。
最後まで争ったのは道尾秀介さんの『光媒の花』(集英社)。「これといって欠点もないがもう一つ魅力に欠ける。少女が性的な虐待を受ける場面など、小説だから必要な時もあるが少し無造作に扱いすぎていないかとの指摘もあった」という。
姫野カオルコさんの『リアル・シンデレラ』(光文社)については、「熱烈に推す声」がある一方、「破綻(はたん)している部分がある」との指摘もあって賛否両論となった。「破天荒なところも含めて魅力ではないか」と強く推されながらも多数の支持を得られなかった。冲方丁(うぶかた・とう)さんの『天地明察』(角川書店)も「非常に好感が持てる。才能ある新人が現れた」と評価されたが、次回作に期待することになった。
選考会は、選考委員だった井上ひさしさんが死去し、献杯で始まった。また、2人の退任で3人減となった。「井上さんがお亡くなりになりさみしい思いもしたが、7人になったことで長い意見が言えるようになり、議論は活発になった」という。
林さんは直木賞の役割にも触れ、「小説が売れない時代に大きな指針を示さなければならないが、受賞作も含めて小粒な印象は否めなかった」と奮起を促す発言があったことを報告した。(加藤修、都築和人)
冲方丁さん、異例の「待ち会」
「文芸史上、最も楽しい『待ち会』にしたい」。今年の本屋大賞を受賞した冲方丁さん(33)は15日、直木賞の当落連絡を待つ「待ち会」に友人や書店員ら約130人を招いた。プロ歌手の歌あり、原作アニメの上映ありと、異例の会になった。
冲方さんは出版界以外にも関係が深く、お礼を込めて開催した。まずマスコミ24社による記者会見があり、冲方さん脚本のアニメ「蒼穹(そうきゅう)のファフナー」の主題歌をバンドの「angela」が披露。会場を盛り上げた。冲方さんは携帯電話で結果を知り、「悔しい。次も絶対に優れた作品を書きます」と語った。(高津祐典)

おめでとうございます。